和漢コラム便秘の解消にCOLUMN
便秘のための漢方薬、症状別お薬のえらび方。
便秘のタイプ別、漢方薬の種類
それでは、便秘のタイプ別に、その症状や原因、一般的に処方される漢方薬についてご紹介します。
1. 「気」の流れが停滞して起こる便秘
気(生命活動のエネルギーとなる)の流れが悪くなることでおこる便秘。
気は、内臓や血液などすべての部位が活発に働くためのエンジンのような存在。気の流れが停滞すると、腸の動きも悪くなり、便を送り出す力が不足します。
症状:
お腹が張る、ガスが溜まる。イライラ感、精神的に不安定になる。便秘と下痢を繰り返す。
原因・気を付けたいこと:
過剰なストレスや緊張、睡眠不足は、気の流れが滞る原因。また、脂っぽい食事や刺激物、甘いものを食べすぎると身体のなかに余分な熱が発生し、それが気の流れを妨げる原因にもなります。
また、運動不足も気の流れが悪くなるため、日常的に運動を取り入れることも大切です。
処方される漢方薬:
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桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
体力があまりない人に。下剤作用のある生薬を含まないので、効き目はゆるやか。便秘と下痢を繰り返す人にも。 -
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
イライラや不眠などを伴う便秘に処方される。体力が中程度の人むけ。
2. 「血」のめぐりが悪くなること(お血)で起こる便秘
血のめぐりが悪い=全身に栄養を届けるべき血の流れが悪いことを意味するので、腸の活動も弱くなります。そのため、ぜん動運動が十分に行われず便秘を引き起こします。
症状:
腹痛。便が硬くなりやすい。冷えや肩こり、頭痛。
原因・気を付けたいこと:
血のめぐりが悪くなる原因は、胃腸が弱くなって血液のもととなる栄養を吸収できずに血液そのものが足りないことや、冷えやストレスから血流が悪くなることが原因と考えられます。
処方される漢方薬:
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調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
おだやかな効き目ながら、すぐれた排便効果。 -
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
女性で便秘のほかに、冷えや生理痛、貧血の症状がある方向け。 -
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
大黄という下剤作用のある生薬が含まれている。 -
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
イライラや月経不順などの不調がともなう場合に。瀉下作用(下剤効果)が強いため、体力のある人向け。 -
大柴胡湯(だいさいことう)
便秘のほかに、肩こりや腹部の張りがある場合に。大黄(下剤作用)はごくわずかに含まれる。
3. 「水」が足りなくなって起こる便秘
水(体の血液以外の水分)が不足した状態によっておこる便秘。年齢とともに、体内に水分をとどめておく機能は低下していきます。それに従って腸の中の水分も減っていくため、便が乾燥して硬くなり排便しにくくなるのです。
また、老化以外にも、身体のなかに余分な熱がこもることで腸の中は乾燥します。暑がりの人、脂っぽい食事や辛いものが好きな人、お酒が好きな人などは要注意です。
症状:
コロコロとした便が出る。目、鼻、口、皮膚が乾燥する。
原因・気を付けたいこと:
水が足りない便秘タイプの場合は、腸の中の潤いを改善してあげることが大切。まずは、水分補給をしっかりと心がけましょう。
そして、栄養不足も原因の一つであるため、バランスのとれた食事と胃腸の調子を整えるようにしてください。
処方される漢方薬:
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麻子仁丸(ましにんがん)
大黄や麻子仁といった下剤作用のある生薬が含まれているため、比較的すぐに作用が現れるものの、下痢や胃腸の痛みをともなう場合がある。 -
潤腸湯(じゅんちょうとう)
体力は中程度の人むけ。皮膚が乾燥する症状もある方に。
※すべての医師が上記のような診療方法を行うとは限りません。漢方薬を服用する場合は、必ず専門の医師や薬剤師、または登録販売者にご相談ください。
便秘だけでなく、身体全体のバランスを整えよう。
誰でも便秘の状態がつづくとイライラして辛いもの。そんなときには、とにかく便を出すことを最優先にお薬を選びがちですが、便秘を引き起こしている身体の状態を知ることが大切です。
その原因に向き合うことで、便秘の解決につながるとともに、身体のバランスを整えてあげることを目標としたいものです。
また、漢方薬は効き目がおだやかと思われるかもしれませんが、含まれる生薬によっては効果が強いものもあり、体力の弱い方には向かない便秘薬もあります。必ず専門の医師や薬剤師、または登録販売者にご相談のうえ服用するようにしてください。