和漢コラム腰痛の悩みにCOLUMN
心因性腰痛のチェック法と対応。心をゆるめることがカギ
最初は「腰にちょっとした違和感」を感じる程度、特に腰に負担をかけたおぼえもない。日を追って痛みがひどくなるかと思えば、痛くない日もある。整形外科の画像検査でも原因がはっきりしない。
こんな腰の痛みが1ヵ月以上も続いているなら、それは「心因性腰痛」かもしれません。
心が原因で腰痛になるなんてちょっと意外かもしれませんが、精神的なストレスや不安から痛みを感じる腰痛があるのです。そして、心と体の両面からのアプローチで、痛みが改善することもわかってきました。
症状に心当たりのある方は、まずは自分の腰痛が心因性なのかどうかをチェック。本当の原因を見定めるところから、正しい腰痛対策を始めましょう!
まずは心因性腰痛かどうかをチェック
一般的な腰痛とは違い、心因性腰痛は精神的なストレスが原因で起こります。
その特徴の一つとして挙げられるのは、「症状が人によってバラバラ」ということ。下のリストのすべてが当てはまるわけではありませんが、チェックが付くものがいくつかあれば、心因性腰痛の可能性があります。
- 姿勢を変えたり安静にしても痛みが続く
- 午前中に痛むことが多い
- 慢性的に痛む
- 痛むところが一定でない
- 気分によって痛みを感じたり、感じなかったりする
- 食欲がない
- 眠れない
- 疲れやすい
心因性腰痛はごく軽い症状から始まるため、多くの人はマッサージや湿布などで対処しようとします。しかしなかなか痛みは軽減しませんし、レントゲンやMRI検査でも、椎間板の疾患など身体的な不具合は見つかりません。
「このまま治らなかったらどうしよう」と不安も増え、未来を悲観して絶望的になるなど、さらにストレスフルな状態に。こうした悪循環で症状が悪化すると、息もできないほどの激痛を感じることもあります。
リストにチェックが多ければ、「心も体も、もう少し休めたほうがいいよ」というサイン。
それに気づき、心と体の両面からの対応法を続けることで、ストレスが減り自律神経のバランスが整いはじめます。不眠や食欲不振も改善でき、体を休めることにもつながります。
心因性腰痛の対応法
自分でもできる「認知行動療法」のやり方
「認知行動療法」とは、その人に特有の「受け止め方のクセ」を変え、ストレスを抱え込まないようにする方法です。
「受け止め方のクセ」というのは、何か起こったときに瞬間的にうかぶ考えやイメージ。それによって、気持ちが動き、行動が決まっていきます。たとえば、「友だちと待ち合わせをしたが、相手が15分遅れると連絡があった」とき、あなたなら瞬間的にどんな考えを思い浮かべますか?
「待ち合わせには遅れるべきではない。でも私が我慢すればいいか・・・」
こんな風に思ったなら、ルールに忠実で、自分が我慢する「受け止め方のクセ」がある人といえるでしょう。
認知行動療法の「認知」とは、受け止め方前半の「遅れるべきではない」、「行動」は後半の「我慢する」にあたります。ストレスをためないような認知と行動を、自分で選択できるようにしていくのが「認知行動療法」です。
ストレス日記を書く
認知行動療法では患者が「ストレス日記」を書き、ストレスを感じたときの考え方や行動を分析し、ストレスを減らしていく方向に修正する材料にします。
(1)状況:何があったか
→友だちが待ち合わせに15分遅れてきた。
(2)思考:何を考えたか
→待ち合わせには遅れるべきじゃない。
(3)行動:実際にどんな行動をしたか
→イライラしながら我慢して待った。腰の痛みが強くなった。でも、友だちが不愉快に思うかもしれないから、イライラも痛みも友だちに気づかれないようにした。
「必要以上に自分の気持ちを抑えていないか」を考えながら整理できたら、次のステップとして、「本当はどうした方がよかったか」を考えます。
(4)振り返り:本当はどうした方がよかったか
→ちょっとイライラしたこと、腰も痛かったこと、次は遅れないで来てほしいと言えればよかった。
人に対して自分の気持ちを出せないことは、ストレスを抱え込むことになります。すべてでなくても、一部だけでも伝えられれば、ぐっと心の負担は軽くなるはず。
さらに日記を読み返すうちに、「我慢して待つ」よりも「15分間、自分が楽しいと思えることをする」方が、イライラしなくてよかったかな、とも考えられるようになります。
最初は勇気がいりますし、時間がかかるかもしれません。しかし「本当はどうしたらよかったか」を自分で理解して、実際に少しずつでもやってみると、これまでよりも「いやな思い」が減っていきます。それにともない、だんだん痛みを感じる回数も減ってくることにも気づけるでしょう。
クリニックでの治療:心と体の両面から治療する
痛みが強い場合には、クリニックでの治療も考えてみてください。というのは、腰の痛みが強いと行動しづらく、考え方も消極的になりがちだから。痛みを抑える治療も受けながらの方が、効果を実感しやすくなります。
心因性腰痛に特化した診療法として、心と体の両面からアプローチする「リエゾン治療」があります。整形外科と精神科が「連携(フランス語でリエゾン)」して治療します。
整形外科での治療は、痛みの軽減が主体。心因性腰痛には一般的な痛み止めは効果がないので、抗うつ薬を用います。この薬には、不眠や食欲不振といった症状を緩和する効果も。医師によっては漢方薬を処方することもあります。
同時に精神科で、先に出てきた認知行動療法を使って受けとめ方のクセをなおしていきます。
医師のサポートのもと痛みを軽減しながら治療を進められるので、痛みがひどく絶望感を感じている場合や、何に対してもやる気が起きない状態になっているなら、専門医の受診を検討しましょう。